1959年に北イタリアで創立された老舗シューズメーカーの「SIDI(シディ)」は 創設者のディーノ・シゴノーリ氏の姓からDi、名からSiを取り、それを反転させてブランドが名づけられました。ディーノ氏の少年期の夢は自転車選手でしたが、その夢はいつしか靴職人としての情熱へと変化していきました。 ディーノ氏の情熱はサイクリングシューズに数々の革命を起こし、 今では多くのトップライダーが愛用するシューズへと進化しました。 SIDIのシューズづくりへの情熱の原点や、考え方を歴史を振り返りながらご覧ください。
設立当初は靴職人の為のトレッキングシューズ研究室として始まりました。 当時の靴は革製アッパーと木製が主流でした。
会社設立10年が経過する頃には、サイクリングシューズとオートバイブーツ生産開始。 当時はシューズのつま先を、ペダルの金具とバンドで固定するトゥクリップ式ペダルが 使用されており、シューズソールへ釘で金属プレートを固定する方式でした。 釘で固定されているため一旦固定すると容易にプレート調整が行えませんでした。 このプレートをネジで固定する事で、いつでも工具を使ってプレートを動かす事ができる 可動式プレートをディーノ氏は生み出しました。この方式が現在サイクリングシューズ メーカーの標準となっている可動式クリートシューズの原点となりました。
オートバイブーツにおいては、当時オートバイレースの英雄 ジャコモ・アゴスティーニと共にオートバイロードブーツの 開発を進めました。さらに5度の世界チャンピオンに輝き、当時トップに君臨 していたジョエル・ロベールと契約を結び、フルバックルタイプ フルボアブーツ”G.P JOEL ROBERT”を発表しました。
サイクリングシューズ革命を起こした第1号シューズ ”TITANIUM”を発表しました。それまでの製造の基準だった ソールに釘を打つ製造方法は消え、可動式 クリートとして全世界にうぶ声をあげました。 当時のサイクルシューズ市場には衝撃的なトピックでした。
SIDI初ナイロンソールのサイクリングシューズを生産。それまで標準とされていた 木底ソールでは天候や温度によって一貫した剛性が得られない事から、それらの 品質を安定させるためのものでした。 この年には創設以来初めてロゴマークの変更がされました。
この年にもSIDIの革命は起こります。 シューズの名は”REVOLUTION”です。 今までのサイクリングシューズは一般のシューズ同様に 紐で足と靴とをフィットさせるものでした。この時に初めて ベルクロを採用する事で、足の締付けを容易に調整することが できるようになり、走行中でも調整が可能になりました。 このシューズの存在を世に知らしめたのが フランスの英雄・ローラン・フィニョンです。 フィニョンのツール・ド・フランスでの活躍により 世界中のサイクリストがこのシューズに注目しました。
この頃、オートバイクブーツでは唯一の 交換システム、カムロックオフロードバックルを採用しオートバイブーツ先駆者となって行きます。
オートバイブーツ革命の同じ頃に SIDI初のマウンテンバイク用シューズは ゴム底を採用して作られ ”サイクルクロス”として名を上げました。
SIDIは誰もが考えつかなかった革命を起こします。 革に似て柔らかく、軽く、強く、撥水性と 通気性に優れている、合成素材「ロリカ」を採用。 現在のSIDIにつながる転換期となりました。
オートバイロードレースにおいてはモトGPで SIDIを使用するライダーたちが活躍を続けていました。 フレディ・スペンサー、アレックス・バロス、 コリン・エドワーズ、ステファン・エヴァーツなど 英雄たちがSIDIのシューズを使用してレース界をリードしていました。
複数のクリートの種類と互換性を持たせたシューズ”DOMINATOR”と”CHALLENGE”を発表しました。
当時はこの奇抜なカラーが話題となり、SIDIのデザインの柔軟性によって、サイクリングシューズのカラーの概念に変革をもたらしました。
この年、SIDIはソール技術の見直しに再度注目します。 それは世界初の空気力学、いわゆるエアロダイナミクス への研究に取り掛かりました。 昨今のペダルメーカーに対するクリートの規格の違い にも対応するため、シューズを作るのではなくソールに 窪み部を確保し、そこへ専用アダプターを付けることで ソール部の凹凸を減らし空気抵抗削減に成功しました。
SIDI初のラチェット式マイクロロックシステム導入。 この開発が進む中ミゲールインデュラインが ツール・ド・フランスを1991年から1995年まで 5連覇し、ジロ・デ・イタリアでも1992年、1993年の 2連覇の偉業をSIDIと共に成し遂げました。
”SHADOW”を発表しました。 甲部分のストラップは、ベルクロよりも硬く信頼性が 高くなりました。また交換可能な構造で ラチェット部はホールドとリリースが別機構に なっており、走行中の緩みを防ぐことに 成功しました。
マウンテンバイクシューズのソールは激しく消耗するため、 当時はシューズ自体を交換せざるを得ませんでした。 しかし、交換ソールインサートの誕生で各消耗部品の 交換が容易となり、シューズの寿命が長くなる事で ユーザーフレンドリーなシューズへと変化しました。 ロードサイクリングシューズでは”ENERGY”を発表、 バックル1箇所とTECHNOダイヤルを2箇所を使用し 全ての箇所の締め付け調整が容易に行えるようになりました。
2度目のロゴマークを変更を行いました。
3つの異なるリテンションシステムを採用した ”ERGO”を発表しました。 ベルクロストラップは歯形状のポリマー製ロック機構 を加えたことで緩みを防止することに成功しました。
この年にハイテクカーボンソールが誕生。 ナイロン素材に、全体の40%のカーボン素材を加え 低密度材料で作られたコンポジットソールは 非常に硬く、高温でも屈曲することがありません。その耐久性は ライダーのパワーを更に引き出します。
当時はオーダーシューズが盛んでありませんでした。そのためフィットさせる際にズレが生じやすい踵部を締め込んで、調整可能なヒールカップシステム(HCS)を採用し多くのサイクリストに注目されました。
SIDI初のフルカーボンソールを設計しました。 ソールは各部分で異なる厚みに設計し、アッパー部 の締め付けとソール形状の影響による血液循環を妨げないことをコンセプトに完成されました。 カーボンソールはマウンテンバイクシューズにも採用され、カーボンインサートとSRSトレッドは取換え可能でした。
オートバイモトクロスでの躍進も続いており 2009年から2014年までモトクロス世界選手権 MX1、MXGPにてアントニオ・カイロ―リが6連覇を達成しました。その際に使用していたSIDI”CROSSFIRE”はモトクロスブーツの代名詞にもなりました。
カーボンソールの見直しが図られました。空力学的な 構造改善に加え、開閉可能なエアインテイク機能を 採用し、足裏空気循環による快適性が向上しました。
最新機能が満載のサイクリングシューズが誕生。 ”WIRE CRBON GENIUS”は足首のベロ部への負担を軽減 するソフトインステップ3システムを導入。アッパー部へは テクノ3ダイヤルシステム、踵部にはしっかり固定する ためのヒールカップシステムを用いて、近未来のシューズの 完成形となりました。
オートバイロードレースブーツにも サイクリングシューズで採用されたテクノダイヤル システムや、ヒールカップシステムなどを 取り入れ、一貫性のある生産方式を確立しました。
オートバイオフロードでは女性ライダーの キアラフォンタネージが2018年までに FIM女子モトクロス世界選手権で6度のタイトルを 獲得しました。女性モトクロスライダーの憧れと なっているキアラの足元はSIDIでした。
”SHOT”を発表。 2箇所のダイヤルをアッパー中央部に集めた事で 紐靴のような締め付け感覚を実現しました。
SHOTを使用したエガンベルナルはこの年に ツール・ド・フランス個人総合優勝を果たしました。
SIDI創業60周年を記念して発表された”SIXTY”。 今までのフラッグシップモデルSHOTから、左右合わせて 40グラムの軽量化に成功しました。
新型コロナウィルスの影響により1年遅れで開催された 東京五輪男子自転車ロードレースで、リチャルカラパス がSHOT2を使用して金メダルを獲得。 ジロ・デ・イタリアではエガンベルナルがSIXTYで 個人総合優勝を果たしたことで時代と共に進化し続ける メーカーとして注目され続けています。
SIDIは製品開発の改善と共にエコフレンドリーな 取り組みも行ってきました。シューズを軽量化することでの有害物質削減に努め梱包材はリサイクル材料を使用する事でCO2削減にも貢献しています。