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SIDI 2023.04.07

SIDI 世代を超えてつなぐサイクリングシューズ【第1回】

SIDIを使用する国内プロチームメンバーを中心に、世代を引き継ぎながらインタビューを行う本企画。

第一回は、愛三工業レーシングチーム テクニカルディレクター 西谷泰治 氏にお話を伺いました。

西谷氏は現在、愛三工業レーシングチームで選手のマネジメントやコーチングを主にされています。現役時代から同チームに所属し、日本人離れしたスプリント力で海外選手と渡り合い、多くの成績を残してきたレジェンド選手です。

現役当時からSIDIのサイクリングシューズを愛用し、ご自身でも一番好きなシューズブランドと語るほど。自分でシューズを選べるときには、必ずSIDIを選択してきたというほど愛用してきました。西谷氏が現役選手たちへ、何を引き継ぐのか?ぜひご覧ください。

--初めてSIDIのシューズを手にしたのはいつですか?

大学2年生の頃ですね。その前のシューズは4年くらい履いていたのですけど、さすがにヘタってきていて。お金もなかったのでお年玉を元手に新しいシューズを買おうと思って、ショップで一目惚れしたのがSIDIでした。今まで履いていたシューズの何倍もフィッティングが良くて、それ以降はSIDI一辺倒です。履き心地もいいですし、自分の足にしっかりフィットしました。そして何より、伝達力がいいですね。ペダリング効率も上がって、このシューズじゃないと無理だと思うくらいで、大学3年間を通して使い続けました。

--その後もSIDIのシューズを使い続けましたか?

現愛三工業レーシングチームに入ってからは、供給されるシューズを使いました。どうしても合わない部分はあるんですけど、サプライ品だったので自分がパフォーマンスを落とさないように工夫しながら履いていました。何度かスポンサーも変わり別のシューズも履きましたが2005~06年くらいの時にチームでのサポートが終了して、チームからも個人スポンサーを探すように指示がありました。それならSIDI一択だなと思って、サイクルモードに出展していたSIDIにほとんど飛び込みでお願いに行きました。

そこから10年間弱ずっとSIDIにサポートしていただいて現役引退まで通させてもらいました。

--どうしてそこまでSIDIにこだわったんですか?

もしかしたら思い込みかもしれないですが、このシューズじゃないとダメだなっていう印象が当時はありましたね。それくらい自分に合ったシューズだと思います。形が変わらないと言うところもいいですね。モデルチェンジするとシューズの形やコンセプトが変わって、自分の感覚に合わなくなることがあるんですけど、SIDIはキープコンセプトで作り続けてくれたところが、ありがたかったなって思いますね。

--SIDIはシューズメーカーとして歴史もありますが、当時はメーカーの背景などもご存知でしたか?

当時はあまり詳しくなかったです。シューズも3~4年くらいで履き潰してしまって、あまりこだわりはなかったので。ただ大学生からは格好いいものを履きたいという、おしゃれ心みたいなところから入ったのがきっかけです。当時はSIDIの歴史についてはあまり知らなかったですね。

--現在、サイクリングシューズの選択肢は増えていますが、その中で今もってSIDIを選ぶ魅力はどんなところにありますか?

まずはひと目でSIDIと分かるデザインですね。もともとデザインに惹かれて購入したので。あとは、先ほども言った通り、ずっと形を変えないことですね。シューズとして完成されていると思うんですけど、それを常に変わらずに高いクオリティで提供してくれる。もう出会って20年ぐらいになるんですけど、そこに魅力があるんじゃないかなと思います。

現役時代に使用していた「EROG 3」

--海外遠征が多かった西谷さんですが、シューズで苦労したことはありますか?

幸いなことに、シューズで苦労したことはないですね。落車しても滅多に壊れないですし、例え壊れたとしても補修パーツも充実していたので大丈夫でした。ダイヤルやヒールパーツも替えられますしね。

シューズが馴染むとそれをずっと使い続けたいんです。なので補修して使い続けられるのはいいですよね。作りがしっかりしているので買い換えも少なくて年間2足あれば事足りました。本当に頑丈だなっていうイメージがありますね。

--あれだけの海外遠征とアジアツアーの激しい環境の中でも2足でシーズンを通していたんですね。

クオリティはピカイチですね。1年でヘタることはなかったです。ソールもしっかりしていて、当時、コンタドール選手もソールが硬くてワンランク落として使っていたという話も聞きました。

アッパー部分も雨で濡れると緩くなるシューズもあるじゃないですか。SIDIはそれがないです。雨の日でも安心できますし、ガシガシ洗っても型崩れしないので、そこも大きなメリットですね。

--シューズを選ぶ際の西谷さんなりのこだわりポイントを教えてください。

自分のペダリングが引き足を使いがちなので、カカト部分のサポートがしっかりしていることですかね。あとは丈夫さが一番大事です。やっぱりヘタると履き心地が変わったり、引き足を使ったときにイマイチなんですよね。SIDIの前に履いていたシューズは、樹脂ソールがしなり過ぎてしまって無理を言って海外からカーボンソールを取り寄せてもらっていました。それくらいスプリントの時のソールのダイレクト感は大事ですからね。

ツアーオブジャパンステージ優勝など、数々のタイトルをSIDIを使用して獲得してきた。

--SIDIの重量に関してはどう思いますか?

重さかぁ。あまりシューズの重さを気にしたことがなくて、、。特に私はスプリンターだったので、シューズが軽いからと言ってアドバンテージになることはなかったですね。もしかしたら山を登る時には全体の重量としては軽くなるので有効なのかなと思うんですけど、それで結局、自分が欲しい伝達能力とか耐久性を担保できないのであれば、数gとか数十gの重量はメリットにならないと考えてます。それよりも自分を鍛えたり、体重を減らす方が効果的ですよ。

--SIDIは独自ダイヤルを採用しています。レース時の使用感はいかがでしたか?

SIDIに関しては、レース中にずれる感じがなかったので、締め直すといういことはあまりなかったような気がします。もちろんラスト10kmくらいでワンクリックぐらいは締めることもありましたが、そもそもフィットしていて緩みにくいので、その時点で安心感がありますよね。ただ保険的にカチッとやるくらいのイメージです。走行中にも操作できるので、使いづらいとかはなかったです。ずっと使っていて慣れているのかもしれませんが、そこまでひっ迫したような状況は生まれないかなっていう気はしますね。慣れてなく、ダイヤルの使用感が気になる場合は、余裕のあるタイミングを見計らって締め直すのが安全です。

--西谷さんはシューズにインナーソール入れていましたか?

私は入れていない派です。確かに当時は、自分に合ったものを成形してもらうっていうのが主流で、試しに調整してもらったこともあったんですけど、逆に足が痛くなっちゃって。なのでソールはデフォルトのもので大丈夫です。むしろダイレクト感はこっちの方が生まれていた気がします。変に下駄を履かせちゃうと自分の感覚として遠くなるんですよ。ペダルと自分の足が遠くなる感じがあって、歯切れが悪いというか、リズムが取りづらくなります。ヨーロッパの選手はどうしているんですかね?

--ヨーロッパの選手でも入れていない選手がいますよ。

やっぱりそうですよね。たぶん細かいことを気にしないと思うんですよね。ポジションもメカニックに合わせてもらってることも多いと思います。

シューズの調整にはソールよりもアッパーの締め付け具合が重要ですね。長時間履いていると足の甲が締め付けによって痛くなってくることもあるんですけど、その辺りの調整が絶妙だなと思います。それがSIDIのフィット感の良さにつながっていると思います。

西谷氏が使用していたシューズの後継モデル「EROGO 5」
フィット感と快適性が改良された第4世代のSOFT INSTEPストラップや、トップモデルと同じTECNO-3 PUSHクロージャーシステムなど、コストパフォーマンスに優れた人気モデル。

--デザインで気に入っているポイントを教えてください。

シューズコーナーで並んでいるのを見ても、トップグレードのレースに特化したシューズとして、やっぱり格好いいなと思います。SIDIはデザインセンスも色のチョイスもいいですね。サイクリストはちょっと派手な色を選ぶ傾向にあると思いますが、ファッション的な意味合いでも他と差をつけられると思います。見た目が気に入っているシューズを使うと気分も上がりますしね。

--選手にとってはシューズもサポート品の一つという認識だと思いますが、ワールドツアーに参加する選手の中でもサポートをきっかけにSIDIを気に入るケースも多いんです。個人で工場訪問したりもしていますよ。

基本、ブレないのがいいですよね。一本筋が通っているメーカーのものは安心して使えるかなって思いますね。

数々のプロ選手がSIDIの工場を訪れている

--このインタビューでは、「世代を引き継ぐ」というのをテーマにしています。日本のトップライダーから次世代にバトンタッチするにあたって、SIDIの良さも引き継いでいただきたいのですが、ユーザーやサイクリストへのメッセージをお願いします。

シューズの重さなんか気にするなっていう言葉はさておき(笑)歴史も長くて品質面で信頼のおけるメーカーだなっていうのが第一にあって、長く愛せるものだなと思います。デザインも昔から変わらない部分もありますが、最近は似たようなシューズが多い中で独自のデザインを貫き続けているところにアイデンティティがあると思っているので、こだわり派の方々にはぜひ履いてほしい一足だなって思っています。

--創始者のディーノ・シニョーリも、多くの人に喜んでもらえる靴を作るより、一人のサイクリストに喜んでもらえる靴を作りたいという考え方なので、こだわりが強いメーカーではありますね。いまだにメイドインイタリアにこだわり続けているので、大量には作れませんが、その分、品質には自信があります。

そういったシューズが高くなっていくのは仕方ないことだと思いますね。職人さんも減っていく傾向にあるんじゃないですか?こういういいものは世代を超えて残していきたいですよね。私は今後も履き続けたいなと思います。

--ありがとうございました。

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