CHALLENGE 2020.08.21
竹之内悠選手スペシャルインタビュー No.3
シクロクロスで輝かしい戦績を残す竹之内悠選手との対談の、最終回となる今回は、チャレンジタイヤについて。機材に敏感で厳しい一面を見せる竹之内選手と東洋フレームの石垣社長が機材管理の面からタイヤの性能について語り、これからのシクロクロス競技界のタイヤのトレンドを占います。
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シクロクロスのトレーニングの時もチューブラーですか?
竹之内 悠(以下 T )
僕、普段シクロクロスのトレーニングって特にしてなくて。ヨーロッパでは週1回はしてるんですけど、僕は日本ではしてなくて。まぁ求める形のトレーニングをする環境が日本にはないし、無理に探してもいないですね。どこかないかな。(笑)
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普段使用されるのはチューブラーですね。
T
僕はチューブラーですね。でも北米の選手はチューブレスで走ったりしてますね。でも、空気圧は高いです。
この前使ってめっちゃ良かったんですよ、チャレンジのGRAVEL GRINDERのチューブレス。良かったんですけど、幅が35mmもあって、そりゃ楽やなって。大きなレースでは使えないなって。
けど一般ライダー層だったり、女子のトップ選手と言わないまでも20番以降とかは、ちらほらチューブレス使う人が出てきてます、世界でも、ヨーロッパでも。というのもすぐにタイヤを変えられたりって利点がありますよね。ホイール数が少なくて済むので経済的にも良い。なので、タイヤメーカーとしてもそっちの方が売れるんだったら、チューブラーって特異なものなんで今後チューブレスになるんじゃないかって社長もずっと言っていて、それも含めてチャレンジのチューブレスのテストをいろいろさせていただいていてるんですけど。
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実際、空気圧ってかなり低いじゃないですか。普段、標準でどれくらいの気圧ですか。
T
チャレンジタイヤの場合は基本が1.5ですね。1.5から±0.1~0.2くらいです。
チャレンジはデュガスに比べてタイヤのハイトが低くて、なのでリム打ちするスピードが早いので1.5くらいですかね。
デュガスだと振り幅がもう0.4くらい膨れるんですけど。例えば砂セクションが多い東京シクロクロスの時だと1.0か1.1くらいで、デュガスで走ったりするんですけど、チャレンジだと下げても1.2〜3ですね。
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ならではの意見ですね。デュガスのと比較。
石垣鉄也(東洋フレーム代表、以下 I )
この子はデュガスを使ってた時期を経てチャレンジを使ってるんで、
どうしてもデュガスはこうだけどっていうのがあるんでしょうね。
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デュカスベースになるんですね。
I
張ってる人間からしても全然ちゃうんですけど、デュカスとチャレンジでは全然張りやすさが違う。
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どちらが張りやすいですか。
I
そりゃ、チャレンジの方が張りやすいですよ。デュカスは命がけやもんな。
T
顔が真っ赤になりながら。
I
新品のタイヤを張る時は命がけでやらないといけないですよね。でも張っちゃうと違う。そこまで考えられているんですよ。タイヤ張ってこうゆう性能を出そうというところまで考えて、デュガスはタイヤを作っていると思うんで。タイヤの性能はよろしくないんですよ。ちょっとブレてたり。でも乗ったらあんまり気にならない。それよりも乗った感触、トラクションの感触はデュカスが好きですってハッキリ言いますよね、この子は。
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コースのタイヤ選択は選手の意見ですか?
T
話し合います。僕ベースですが、一人で決めても選手は視野が狭くなるので、チームとして決めたい部分ですよね。僕はこう思いますけど、社長はどう思いますかという会話はします。
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トップ選手は1年でこんな本数を消費するんだとびっくりしました。
T
多分ヨーロッパのクロスはもっと使ってると思います。
グラベルモデルで出しているチューブレスチューブラーって他のトレッドでも作れますか?
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不可能ではないですね。タイヤにトレッド貼ってあるだけなので。
T
シクロクロス用は出てくる予定ですか?
I
ジャパンエディションというのがあった方が売れると思います。
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それはこちらからもイタリアに伝えてはいるんですけど。
I
是非作ってもらいたいですね。日本のレースでこの子、95%はCHICANEちゃうかな。BABY LIMESを他の子が使う中でもこの子はCHICANEなんです。
T
雪の全日本は僕は全部CHICANEにして、雪を砂やと思い込んで走ってるんですけど。
I
速く走らせるためには、それだけリスクがある。それをタイヤに求めるなと、タイヤはそんなん求めてないぞと。
T
どうやって前に走らせようかなといつも考えてたんですけど。
I
前回の全日本選手権2位やったんですけど、チューブレスやったら多分、悠が勝ってますよ。チューブレスで良いタイヤがあれば。そういうレースやから、もうちょっとタイヤの空気圧を上げてケーシングが柔らかければ使えるんですよ。
なんでチューブラを使ってるかがみんな分かってないんじゃないですか。
オートバイも車も低気圧じゃないですか。ロードだけアホみたいに高気圧になってるだけで。結局リムと路面との間にタイヤがおって、トラクションだけでいうと前後するじゃないですか。シクロクロスはそれがリアルなんですよね。だからそれがいいのがチューブラなだけであって、チューブレスの良いタイヤがあればチューブレスを使いますよ。でもだいぶケーシングが薄くなってきているんで、チューブレスもそろそろ使っていったら良いんちゃうのっていう。
で、クリンチャーだとまん丸にできないじゃないですか。でもチューブレスだとまんまるにできるから性能も良いやろうからそっちを勧めているんですけど、如何せん太かったっちゅう話やね。
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前回の話で登場したリッチーヨーロッパ社長のモーガンとの再会がチャレンジを使うきっかけになったとのことですが?
I
リッチモンドの世界戦に行った時に試走でコース行くじゃないですか、そしたらモーガンがいたんですよね。で、久しぶりやなーってなりますよね。で、お前何してるんだって聞いたら、俺チャレンジだっていうから、え?って言ったら、モーガンの奥さんの会社がクレメン買収劇の後でその製造の権利を引き継いでチャレンジを創業していたんですね。
今チャレンジだから、お前のチームで必要なら何本でも出してやるぞっていう話になった。デュガスだったけど、全部チャレンジに変えたんです。そっから始まったと思うけど、結局、機材って自分たちが困った時に助けてくれる人が現地にいるかいないかなんですね。当然デュガスでもできたんですけど、日本チームとして全員デュガスがやってくれるかって言ったら、やってくれなかった。
あの頃、織田聖とか前田公平なんて全然相手にしてくれなかったから、彼らは凄いパンクしたんですよ。そしたら、チャレンジに持っていったら全部新しいタイヤと変えてくれた。それでも結果は出なかったんですけど。そういうのって僕の仕事でもあるからそれに対して日本チームとしてすごく感謝していて、そこから、日本でチャレンジを使えるような環境を我々が作りましょうってなったってことです。
僕の中では、昔からの機材としてどうあるべきかがなんとなくお互いわかっている中での取り組みなんで、僕は、チューブレスチューブラーかチューブレスかわからないですけど、絶対作ってもらいたいですよね。
もうはっきり言ってチューブラーの時代じゃないと思う。
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それはかなり衝撃の意見ですよね。ロードがそう言われて何年か経つ状況で、シクロクロスもチューブレス履いて出ている人も多く見かけますしね。ヨーロッパのCXライダーは今もほとんどチューブラーを使っていますが、日本のシーンではチューブレスになっていくのかなとは思っていたんですけどね。
T
日本の一般の人はこれからチューブレスですよ。こだわりが強いやつだけチューブラー履いてて。
I
チューブラー以上のチューブレスがあれば、この子らもチューブレスですよ。
T
野辺山でチェコから来たエミル・ヘケレはチューブレスのGRAVEL GRINDERで機材ないからそれで無理やり走ったんでしょうね。で、優勝した。マキノでも同じタイヤで走って勝ってました。
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チューブレスの場合、ある程度、空気圧が高止まりする可能性についてはどうでしょうか?
T
感覚でセーブするんじゃないですか。でも1.5〜6まで落とさないと絶対走れないと思うんで。
それかもう一個上のスピードで走るかですね。速くなりゃ、空気圧も高くないと対応できないんで。1.6〜7くらい。
I
でもルクセンブルク世界選の女子で武田和佳が走ったんですけど、チューブレスだったんですけど1.0でしたよ。これでないと走れないと言いましたね。それでちゃんと走りよったから、もうそういう時代なんやなと思いました。女子っていうのもあるんですけど、それなりのコースなんで。その頃からチューブレスになるんやろうなと思ったんですけど。ほんなら、機材も減る。その時に的確にタイヤを変えれる。っていうのは、選手にとってもプラスじゃないですか。まあ2年くらいかかるんでしょうね。
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商品化するには多少かかるでしょうね。ただ、そこは僕らもかなり気になっていて、なんとかして形にしたいところだと思うので。
I
マウンテンバイクはみんなチューブレスになってますよね。なんでなん?ってとこですよね。それだけタイヤメーカーがお金をかけて開発をしているんでしょうね。マーケットが大きいから。シクロクロスもマーケットが大きければ、そうなるはずなんです。ただ如何せん手作り屋さんがまだやってる時代ですから、大型のメーカーがシクロクロス用のタイヤを作ってくれるところがないんでしょうね。ミシュランとかが作り出してきてるから、だいぶ変わるんじゃないですか。チャレンジタイヤはいつするのって思っています。
T
今年、チューブレスでレース走って露出したかったんですけど、僕の怪我もあって、あと若干幅が太いのもあっていけなかったんですけど。僕が一回使うと空気感も変わるじゃないですか、シクロクロスに関しては。チャレンジのチューブレスというイメージが早めに作れたらマーケティングとかもやりやすいかなと。
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今ロードではハンドメイドチューブレスのバリルーベを使っていただいてますがどうですか?
T
しなやかさを生かして走るんであれば4.5barがすごく良くて。速さを求めるんだったら、7とか8とか、結構パンパンに入れないと。チャレンジのロードタイヤは基本的にトレッドがヌメッとしてグリップが効くので、コーナーでもオーバーステア気味に入りますし。空気圧を思いっきり4.5ぐらいまで下げたら、ケーシングが柔らかくしなるんで、乗り心地とトレッドの柔らかさがまとまるんですよ。それで走らせたら個人的には凄い気持ちいいんですけど、一般の人はどうでしょうね。レースで使うのは25mmとかの方がいいんかなと思ったりもしますけど。
25はあるんですか?
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あります。STRADAという商品でハンドメイドチューブレスも発売しています。
T
それやったらそんなにガンガン振らなければ乗りやすいというか。この柔らかさがヌメっちいと思わせない空気圧とバイクとのセットアップで。でも、今でも皆さんロードでカチカチなんで、これでも気持ちいいかと思いますけど。
I
まだカチカチですか。
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ロードはまだ。でも以前よりだいぶ下がりましたね、空気圧は。ただやっぱり4bar台とかのレベルには達してないと思います。感覚的に硬い方が早いと思っている方が多くて私もあのタイヤ(PARIS ROUBAIX)で7とか入れるとあまり走らなくて、5ぐらいにすると凄く走るので、疑問は確証に変わりました。
話は変わりますが、シクロクロスタイヤはサイドノブがYの字になっているじゃないですか。
その向きについて前後どちらでセッティングするのか、竹之内選手の好みのお話を聞けたらと。
T
僕はずっと前の方です。トラクションかける方じゃなくて、前方向に。Yの字が後ろを向いている方向しか、僕は組んでないですね。
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それはコースの設定とか関係なく?
T
関係なくそれで行きます。シクロクロスってそんなにトラクションをかけて走るっていうよりもスピードなんで。僕はギアが46/36でリアが11/28で常にアウターで走って46/28で踏み切れないところは担いで走るんで、トラクションを追っかけるスピードになってる頃には走った方が早いんじゃないかっていう。だからとりあえずスピードで、普段泥セクションとかもトラクションをどうこうじゃなくてスピードで泥の表面をかぎ、あとはケイデンスをあげたりして、体の方でコントロールして。別にタイヤのトラクションはあったら、あったでいいと思うんですけど、トラクション=抵抗なんで、だから抵抗が少ない設定で。その辺りのトラクションを増やしたければ、空気圧をコントロールしますね。
758
例えばCHICANEであればそれはイメージできるんですけど、BABY LIMUSが必要なコース設定だと多少グリップ稼ぎたかったりっていうのがないのかなと。
T
そうですね。
758
それでも同じ設定で?
T
それで行きますね。けど最近ほんまにコースによって、ずっと泥で、ある程度トラクションを保って46/28で踏み続けなあかんコースがもし出てきた時のために、ライムスとかも30mmのを持ってたらいいかなと思ったりもしますね。やっぱり刺さないと走らないというところもあるので。細いタイヤにしてノブがないくらいの感じとかも1個あってもいいのかなって思うんですけど。3ペアくらいホイールがあったらそういうレースもしたいですね。基本的に3セットホイールを持って、シケインとライムスでそれそれ3セット。それよりも最適なトレッドって考え出したらあるとは思うんですけど、普段からこなしているレース数を考えると、その考える労力を無くしてできるだけシンプルに直感で行きますね。ちょい泥くらいやったら全部シケインで走れるんで。
シケインってよくできてると思うんですよ、空気圧がを下げたらトレッドの全部の面が地面に当たるんで、結局トラクションかけれるんです。その代わりブレーキングの時にセンターノブがないからツーっと滑るんで、それだけちょっとコントロールしてあげたらというのがありますが。
あとラウンドの形状も結構太いんですよ、サイドの張り方が。サイドノブがより外に向けて張ってるんですよね。これが張り出してくるんでちょっと幅が広くて、走っててフワフワ感があるので、タイヤ全体のラウンドの形としてはシケインが一番綺麗かな。
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幅が広く感じるというか?
T
ちょっとね。チャレンジさんは安全牌で細めでされていると思うんですけど、デュガスはもうちょい幅広いプラス高さがあるんで。ピレリとかいろんな他メーカーさんも太めのやつやってますけど、円周を稼ぐためにやってるんで29inchみたいなもんですよね。結構みんな高さを稼ぐようにしてるんで。
なんだかんだチャレンジのタイヤは世界チャンピオン獲ってるし、そもそも全然使えるんで、円周の大きさが全てではないでしょうけどね。
全3回でお送りした今回の記事はいかがだったでしょうか。世界で活躍される竹之内選手の幼少期からの貴重なお話や、東洋フレームのモノづくりへの姿勢、チャレンジタイヤへの考えなど、大変貴重な機会をいただくことができました。みなさまにも今回の記事をお楽しみいただければ嬉しく思います。